Day 5:『青の祓魔師(エクソシスト)』

以前はカトリックにおけるエクソシストについてご紹介しましたが、今回は日本的な要素を取り入れたアニメ『青の祓魔師(ふつまし、エクソシスト)』をご紹介したいと思います。先日取り上げた『光が死んだ夏』でも「祓い」と「穢れ」という日本的な語彙について触れましたが、『青の祓魔師』もまた、悪魔と人間が交差する世界観のなかで、正義と悪が単純に二分されないという、ある意味『鬼滅の刃』にも通じる空気を漂わせる長寿シリーズです。原作は加藤和恵先生。少年漫画界で活躍されている女性漫画家です。

アニメ考察

ネタバレを避けるため、ここでは設定の一部だけをご紹介します。主人公の奥村燐と雪男は「サタンの血」と「人の倫理」の狭間に揺れる双子であり、幼い頃に教会に預けられ、養父・藤本獅郎に育てられました。その出自の詳細は謎に包まれています。彼らや仲間たちが所属する正十字騎士團の活動は、単なる悪魔退治にとどまらず、作中に登場する作法には寺院や詠唱、真言など、神道と仏教の要素が混在しています。西洋の物語が一つの宗教観に基づくのとは異なり、この点は非常に日本的といえるでしょう。

神道において「穢れ」は罪(ツミ)とは異なります。死や病、月経や出産など血を伴う自然な現象を「穢れ」と見なし、それは「不潔」ではなく「気が枯れる(気枯れ)」状態であると考えられます。つまり生命力の一時的な低下であり、祓いや禊によって回復可能なものです。キリスト教における「罪と贖罪」とは、まったく質感が異なります。作中の“エクソシズム”が「祓い」という語彙で語られるのも、そのためでしょう。


神仏習合 × スーパーパワー

『京都不浄王篇』では、京都の宗教都市としての景観や仏教寺院の縁起を背景に、「不浄王」という巨大災厄=穢れを象徴する存在が描かれます。メインヒロイン・杜山しえみは、植物を操る「庭師(ガーデナー)」という強力な力を持ちます。これは万物に宿る精霊を敬う、日本的なアニミズムに通じる表現といえます。

一方、『島根啓明結社篇』では、神木出雲の家系に連なる巫女としての血統と、白狐の使い魔「御饌津(ミケ)」「保食(ウケ)」が登場します。ここには、五穀豊穣や商売繁盛を司る稲荷神に仕える狐――いわゆる稲荷信仰の影響が色濃く表れています。


狐の伝説

狐は日本の神話や民俗において二面的な存在です。九尾の狐は中国神話に起源を持つ霊獣・妖怪で、知恵や魔力の象徴として瑞獣とされる一方、美女に化けて人々を惑わす恐ろしい存在としても恐れられます。有名なのが玉藻前伝説。九尾の狐が鳥羽上皇を惑わし、陰陽師に退治された後「殺生石」となり、有毒な気を放って多くの生物を殺したと伝えられています。現在、栃木県那須の「殺生石園地」は観光名所ですが、ガスの噴出が強い時には立ち入りが制限されることもあり、2022年3月にはその石が割れたことが報道されました。

『青の祓魔師』に登場する“白狐の使い魔”の設定は、稲荷信仰や御食津神・保食神といった食の神々の系譜を踏まえており、妖狐ではなく善狐的な存在として描かれていると解釈できます。


「京都」から「島根」へ

  

アニメは『京都不浄王篇』から『島根啓明結社篇』へと展開し、さらに2024年10月『雪ノ果篇』、2025年1月『終夜篇』と物語が加速していきます。島根といえば出雲大社。旧暦十月を「神在月」と呼び、全国の八百万の神々が集まり「神議り(かむはかり)」を行うと伝えられています。他地域では同じ月を「神無月」と呼ぶのは、この時期に神々が出雲に集うと考えられているからです。

古来、神々は男女の名を書いた木札を用いて縁を結び、縁結びを司ったとも伝えられています。出雲大社では今も神迎祭から神在祭、神等去出祭まで一連の祭事が行われ、地域の重要な行事となっています。

京都には安倍晴明を祀る晴明神社や、稲荷信仰を象徴する無数の鳥居が連なる伏見稲荷大社などがあります。アニメがきっかけで日本に興味を持ち、実際に訪れる方が増えれば素敵なことだと思います。私は関西出身ですので、京都や大阪のおすすめスポットを知りたい方はぜひお気軽にご相談ください。


『青の祓魔師 展(京都文化博物館)』

京都文化博物館で開催された「青の祓魔師展 京都会場」にも行ってきました。本展は原作15周年を記念し、東京(松屋銀座)、名古屋(名古屋パルコ)、そして京都を巡回しました。展示量は『鬼滅の刃』展に比べると控えめで、体験型ではありませんでしたが、加藤和恵先生の直筆原稿が多数展示され、その緻密な筆致に圧倒されました。漫画やアニメを描く人なら、さらに深い視点で楽しめる内容だったと思います。

時系列ごとの解説パネルは非常にわかりやすく、燐たちの物語を改めて追体験できました。特に印象に残ったのは、まだアニメ化されていないエピソードやイラストが多く展示されていたこと。そして、金色のメフィストとクロの等身大スタチュー、さらに90分の劇場版『青の祓魔師』を鑑賞できたことです。劇場版はアニメ本編とは異なるタッチで、東南アジアのお祭りを旅するような華やかさがあり、心を奪われました。


最後に

Japanese Institute of St. Louis(JIOSTL)は、9月28日のアニメフェスに出店します。普段は伝統文化を中心に活動していますが、今回は特別にアニメフェスに参加することになりました。『鬼滅の刃』の炭治郎の刀やハンカチ、折り紙、ポケモンのバッグ、サンリオグッズなどを販売予定です。さらに、『鬼滅の刃』や『青の祓魔師』のフライヤーやポスターは、当団体のInstagramやFacebookをフォロー/いいねしてくださった方(すでにしてくださっている方も対象)に無料で配布いたします。数に限りがありますので、お早めにお立ち寄りください。


Chiren
President, Japanese Institute of St. Louis

http://jiostl.org/
https://www.instagram.com/jiostl
@JIOSTL
https://www.facebook.com/JIOSTL

#japaneseinstituteofstl #japaneseinstituteofstlouis #JIOSTL #jiostl #japaneseinstitute #kimonoclubstl #kimonoclub #STL #japaneseSTL #japanesestl #monk #shingon #meditation #doula #teastl #matchastl #matcha #teaceremony #workshop #hospice #japaneseworkshop #buddhism #buddhismstl #buddhist #kidsworkshop
#青の祓魔師 #エクソシスト #京都不浄王篇 #島根啓明結社篇 #雪ノ果篇 #終夜篇 #出雲 #神在月 #神無月 #稲荷信仰 #狐 #九尾 #陰陽師 #巫女 #祓い #穢れ #神道 #日本神話 #アニメ考察

(参考リンク)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9D%92%E3%81%AE%E7%A5%93%E9%AD%94%E5%B8%AB