一枚の浴衣がドレスになり、また浴衣に戻る——私がYukata Fashion Showで伝えたいこと

8月22日のYukata Fashion Showに向けて、現在、クローゼットの中の浴衣や帯を整理しながら、少しずつ準備を進めています。

今年は日本から、新しい色のへこ帯もいくつか持ち帰ってきました。

アイスブルー、グリーン、パープルなど、並べてみると本当にカラフルです。

私が子どもの頃、「へこ帯」といえば、まず思い浮かべるのは子ども用でした。

大人用といえば、男性が浴衣などに締める紺色や黒などの比較的渋い色合いの絞りのへこ帯。

少なくとも私の記憶の中では、現在のように大人の女性が色とりどりのへこ帯を使って、大きなリボンを作ったり、ふんわりとボリュームを出したり、自由な形を楽しんだりするものではありませんでした。

それが今では、実にさまざまな色や素材のへこ帯があります。

そして私は、この変化をとても嬉しく思っています。

伝統的な着物文化を大切にしながらも、その時代を生きる人たちが自分らしい楽しみ方を見つけていく。

文化というものは、そうやって受け継がれていくものでもあるのではないでしょうか。

「正しく着る」ことを知った上で、その先を見せたい

私の浴衣・着物ファッションショーには、いつも少しだけ「ひねり」を加えています。

普通のファッションショーをそのまま行うだけでは、私自身があまり面白いと思わないからです。

もちろん、これは伝統的な着付けを否定しているという意味ではありません。

私は着付け技能士2級として、まず正統な着付けを学び、その基本を大切にして着付けをしています。

そして日本には、何十年もの経験を積み、素晴らしい技術を持つ着付けの先生方がたくさんいらっしゃいます。

本格的な着付けショーに行けば、私よりもはるかに経験豊富な先生方による、美しく正確な着付けを見ることができます。

だからこそ、私がアメリカで行うショーでは、もう少し違った角度から着物を紹介してみたいのです。

完成された美しい着物姿だけをお見せするのではなく、

「どうやって着物は着られているの?」

「なぜこんなに長いの?」

「帯や紐は何のためにあるの?」

「一枚の平面的な衣服が、どうやって人の身体に合わせられていくの?」

そんな普段はあまり見ることのできない「舞台裏」まで含めて、ショーにしてみたいと思っています。

「この着物、長すぎませんか?」

着物を初めて見る方から、時々聞かれる質問があります。

「この着物、縦が長すぎませんか?」

でも、女性の着物は長くていいのです。

一般的な女性の着物では、その長さを腰の位置で調整し、「おはしょり」を作って着ます。

つまり、洋服のように「自分の身長と同じ丈の服を選び、それを着れば完成」という構造ではありません。

一枚の平面的な衣服を身体に沿わせ、紐などを使って丈を調整し、衿を整え、形を作っていく。

着物は、着る人自身が最後の立体的なシルエットを完成させる衣服でもあるのです。

この「着る」という工程そのものが、私はとても面白いと思っています。

着付けそのものをパフォーマンスに——Kimono Dressing Dance

そこで今回、私自身が挑戦するのが、

Kimono Dressing Dance

です。

完成した着物姿で踊るだけではありません。

音楽と動きの中で、実際に着物を身につけながら、少しずつ着姿が完成していきます。

いわば「着付けの舞台裏」そのものを、ステージに持ってくる試みです。

着物を知らない方にも、

「こんなふうに着ているんだ」

「この紐にはこんな役割があるんだ」

「一枚の長い着物が、こうして身体に合っていくんだ」

と感じていただければと思っています。

完成形だけではなく、その過程も文化です。

それをエンターテインメントとして楽しみながら見ていただくことが、今回の目的のひとつです。

そしてもう一つ——「浴衣を着ないで、浴衣を着る」

今回のショーでは、もうひとつ新しいことに挑戦します。

それが、

浴衣を、リゾートドレスのように着ること。

着物の世界には、着物そのものにハサミを入れず、着付けの技術によってドレスのようなシルエットを作る「切らない着物ドレス」という楽しみ方があります。

実際に現在も、成人式で着た振袖をウェディングドレス風にしたり、お母様から譲り受けた着物を発表会の衣装として着たり、思い出の着物を別の形で楽しむ取り組みが行われています。

「大切な着物だから、切りたくない。でも、箪笥にしまったままにもしたくない。」

その両方を叶える方法のひとつです。

そこで私は考えました。

これを浴衣でもできないだろうか?

今回のYukata Fashion Showでは、モデルさんに一枚の浴衣をリゾートワンピースのようなシルエットで着てもらいます。

そしてステージ上で、

Resort Dress → Yukata

へと早変わりしていただく予定です。

一枚の浴衣です。

ハサミは入れません。

浴衣そのものを作り替えるわけでもありません。

紐の位置、布の取り方、折り方、着付け方を変えることによって、リゾートドレスのような姿から、本来の浴衣姿へ戻します。

なぜ「切らない」ことに意味があるのか

もちろん、私は着物リメイクを否定しているわけではありません。

着なくなった着物を洋服、バッグ、小物などへリメイクし、新しい命を与えることも、とても素晴らしい文化だと思っています。

ただし、着物をドレスに「リメイク」することと、着物を「切らずにドレスとして着付ける」ことには、大きな違いがあります。

切ってしまえば、その布は新しい作品になります。

一方、切らなければ、

今日ドレスだったものが、明日はまた着物に戻ることができます。

ここが、私が今回お見せしたい一番大切なところです。

1.思い出そのものを残すことができる

たとえば、お母さんが成人式で着た振袖。

おばあちゃんが大切にしていた着物。

結婚式で着た思い出の着物。

家族から受け継いだ浴衣。

そうした着物には、布としての価値だけではなく、「記憶」があります。

もちろん、それを切ってバッグやドレスにすることで新しく使うこともできます。

でも、

「この形のまま残しておきたい」

「いつか娘にも着せたい」

「自分が着た後も、次の世代へ渡したい」

と思う着物もあります。

切らずにドレスとして着付ける方法であれば、着物そのものの形を残したまま、別のスタイルを楽しむことができます。

2.一着に複数の役割を持たせることができる

現代のファッションでは、

ドレスはドレス。

ワンピースはワンピース。

ジャケットはジャケット。

それぞれ用途が決まっていることが一般的です。

ところが、着物は「着付ける」という工程があるからこそ、着る人の工夫によって表情を変える余地があります。

一枚の浴衣が、

今日は浴衣。

別の日にはリゾートドレス風。

また別の日には違う帯や小物を合わせて、まったく違う雰囲気になる。

つまり、「一着=一つの完成形」である必要がないのです。

これは現代のファッションから見ると、非常に面白い発想だと思います。

3.体型が変わっても調整できる

着物は、洋服とは身体への合わせ方が大きく異なります。

ボタンやファスナーで決められた位置を閉じるのではなく、身体に巻き、重なりを調整し、紐や帯で固定します。

そのため一定の範囲で、体型の違いや変化に対応しやすい構造を持っています。

さらに伝統的な着物は、必要に応じて解いて寸法を変え、仕立て直すこともできます。

「人間の身体を服に合わせる」のではなく、「布をその時の人間の身体に合わせる」。

これも着物の非常に合理的なところです。

4.布をできるだけ無駄にしない

今回あらためて調べていて、非常に興味深かったのが、環境省も和服の再利用について取り上げていることでした。

伝統的な着物は、一枚の反物を基本として、直線的なパーツを組み合わせて作られます。

そして、仕立てた糸を解くことで、再び反物に近い状態へ戻すことが比較的容易です。

東京都の和裁技能士の紹介でも、和裁は布を直線で裁ち、布を大切に生かす構造を持ち、仕立てた着物も糸を解けば再び反物へ戻ることが紹介されています。

つまり、現代になって突然「サステナブルな着物」という考え方が生まれたのではありません。

着物そのものが、もともと「布を最後まで生かす」ことを前提に発展してきた衣服なのです。

5.親から子へ、そして孫へ

環境省の資料にも、親の世代に仕立てた和服を、好みや体型に合わせて仕立て直して子へ、場合によっては孫の世代まで引き継ぐことが紹介されています。

これは、私が今回のショーで一番伝えたいことともつながります。

ファッションは「新しいものを買うこと」だけではありません。

誰かが大切にしたものを、自分の時代の感覚で着る。

そして、自分が楽しんだ後には、また次の人へ渡す。

私自身、今回のショーで使う浴衣の多くは、私の実家に昔からあるアンティークやヴィンテージの浴衣です。

だからこそ、私はそれを「古いから終わった服」だとは考えていません。

むしろ、

古い浴衣に、2026年の新しい着方を与えてみたい。

そう思っています。

6.「着物を着る機会がない」を変えることができる

海外に暮らしていると、着物を正式に着る機会は、日本以上に限られます。

結婚式。

成人式。

お茶会。

日本文化イベント。

特別な式典。

そうした「晴れの日」がなければ、高価で美しい着物がクローゼットの中で眠り続けてしまうことがあります。

それは、とてももったいないことです。

だったら、

パーティーに着てもいい。

舞台衣装にしてもいい。

ドレスのように着てもいい。

アートとして見せてもいい。

そして翌日には、また普通の着物に戻せばいい。

私は「着物を守る」ということは、必ずしも「触らずに保存しておく」ということだけではないと思っています。

着ることも、文化を残す方法です。

7.日本文化を知らない人への入口になる

そして、これはアメリカで活動する私にとって、とても重要なことです。

最初から着物に興味のある人だけに着物を見せても、文化の輪はなかなか広がりません。

でも、

「え? それ、本当に浴衣なの?」

「切ってないの?」

「さっきまでドレスだったのに、どうして浴衣になったの?」

という驚きがあれば、そこから会話が始まります。

そして、その次に、

「そもそも着物って、どういう構造なの?」

「なぜ長方形の布でできているの?」

「おはしょりって何?」

「どうして何世代も着られるの?」

という興味につながっていく。

私にとってファッションショーは、単に服を見せるためのものではありません。

文化への入口です。

伝統と革新は、反対ではない

私は、伝統を守ることと、新しいことをすることは、反対の概念ではないと思っています。

むしろ、基本を知っているからこそ、

「どこを変えていいのか」

「何を残すべきなのか」

「何がこの文化の本質なのか」

を考えることができます。

もちろん、正式な場には正式な着付けがあります。

着物には格があり、TPOがあり、長い歴史の中で培われた決まりがあります。

それを知らずに何でも自由にすればいい、ということではありません。

一方で、ファッションとして楽しむ浴衣や、舞台表現としての創作着付けには、もっと自由な可能性があってもよいと私は考えています。

正統な着付けを学ぶこと。

そして、その知識を持った上で新しい表現を考えること。

その両方があっていいのではないでしょうか。

今年の新しいへこ帯も、その象徴です

今回、日本から持ち帰ったカラフルなへこ帯を眺めながら、私はそんなことを考えていました。

私が子どもの頃には「子どものもの」という印象が強かったへこ帯を、今では大人の女性が自由に楽しんでいる。

昔なら考えられなかった色や結び方が、今では普通に受け入れられている。

文化は変わります。

でも、すべてを捨てて変わる必要はありません。

残すものは残しながら、新しいものを加えていく。

私は、そんな着物文化が好きです。

ANNA SUI miniの浴衣にも惹かれて

そして浴衣つながりで、もうひとつ。

私が大学生の頃からずっと大好きなブランドがANNA SUIです。

現在、子ども服ブランドのANNA SUI miniから、とても可愛い浴衣が展開されています。

2026年には「Dreamy Stripe浴衣」や「ストライプシグネチャーフラワー浴衣」なども登場しています。

ANNA SUIらしい色彩や世界観が日本の浴衣と融合していて、とても魅力的です。

現在私が確認できた現行商品は子ども・ジュニア向けでした。

大人用もぜひ作ってほしい。

本当にそう思います。

8月22日、ステージでお見せします

今回のYukata Fashion Showで私がお見せしたいのは、

「正しい着物」対「新しい着物」

ではありません。

伝統を理解したうえで、着物にはこんな未来もあるのではないか。

という、一つの提案です。

着物を着ながら踊る Kimono Dressing Dance。

一枚の浴衣を切らずに、

Resort Dress → Yukata

へ変化させるステージパフォーマンス。

そして、私の家族から受け継いだ昔の浴衣と、現代のカラフルなへこ帯との組み合わせ。

一枚の布が、人の手とアイデアによって姿を変える。

そしてショーが終われば、また元の浴衣に戻る。

ハサミを入れなければ、その浴衣は次の世代にも渡すことができます。

いつか別の誰かが、また違う着方を考えるかもしれません。

それこそが、私が考える着物の面白さです。

Preserve the tradition.
Reimagine the way we wear it.
Pass it on to the next generation.

伝統を残す。

今の時代の感覚で、新しい着方を考える。

そして、次の世代へ渡していく。

8月22日のステージを通して、着物や浴衣を「難しい日本の伝統衣装」として見るだけではなく、

「こんなに自由で、合理的で、面白い衣服だったんだ」

と感じていただけたら、これほど嬉しいことはありません。

Chiren
President, Japanese Institute of St. Louis
http://jiostl.org/
https://www.instagram.com/jiostl


@JIOSTL
https://www.facebook.com/JIOSTL

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